介護トイレへリフォーム|工事内容や費用相場、介護保険について解説
ご自身はもちろんのこと、高齢の親が安心して暮らせるよう、トイレのバリアフリーを検討される方が増えてきました。
介護予防も含めると、トイレリフォームをする方の2~3割は介護リフォームを意識している印象です。
ただ、一口に介護リフォームといっても工事の種類はさまざまあり、かかる費用も異なります。
この記事では、 介護を目的としたトイレリフォームの種類と費用相場を解説します。また、介護保険制度や補助金制度についても併せて見ていきましょう。
介護を目的としたリフォームの工事内容
トイレをバリアフリー化する目的は、「高齢の方が一人で無理なくトイレを使えるようにしたい」「ケガや事故を未然に防げるトイレにしたい」「介護者が介護しやすいトイレにしたい」のいずれかに当てはまることが多いです。
ここでは、それぞれの目的に該当するトイレリフォームを9つご紹介します。
手すりを設置する
筋力の低下や関節可動域が狭くなると負担になりやすいのが、座る・立つといった動作です。手すりにつかまることで体が安定し、動作の負担を軽減させることができます。
実際、手すりがあることで、自力でトイレを済ませられる高齢者は少なくありません。また、手すりには転倒を防ぐ役割もあるため、トイレ内での事故防止にも有効です。
手すりを取り付ける際は、設置する壁面の強度、使用する方が使いやすい形状・位置であるかが重要です。高齢者ご本人とリフォーム会社の担当者立会いのもと、手すりの設置計画を立てていきましょう。
手すりについては介護の必要有無に関わらず、半数くらいのお客様が設置を希望されています。
入り口の段差を解消する
高齢になると小さな段差につまずきやすくなり、転倒のリスクが増えるもの。トイレの出入り口の段差の解消はケガの未然防止に役立つとともに、車いすでの入室もスムーズにしてくれます。
トイレのドア枠や敷居が段差になっている場合は、それらを取り外して仕上げ材をほどこし、必要に応じてドアを交換すれば工事完了です。
段差の解消もニーズの高いリフォームの一つです。
ドアを引き戸にする
開き戸は体を前後に動かす必要があるため、高齢になると不便に感じることがあります。特に車椅子での入退室は非常に困難です。それに比べ引き戸は、開閉時の動作を最小限に抑えられます。
開き戸から引き戸にすることで、前後移動のバランスがうまく取れない方、ドアを開ける力の弱い方もラクに開け閉めできるようになります。
ただし、引き戸にするには十分な設置スペースが必要になるため、設置が難しい場合も。3枚引き戸や、引き戸と開き戸を組み合わせたタイプのドアもあるので、リフォーム会社に相談してみましょう。
開き戸から引き戸にすると、介護がしやすくなるといったメリットもあります。
トイレを断熱リフォームする
トイレは廊下や玄関などの冷えた空気が集まりやすい場所であるため、寒い季節はヒートショックのリスクが高まります。
ヒートショックとは、急激な気温の変化により血圧が上下し、心臓や血管の疾患を引き起こす健康被害のこと。排尿・排便時は力むため、より血圧が上がりやすい状態となっています。
そこで検討したいのが、トイレの断熱リフォーム。断熱リフォームというと大掛かりな工事をイメージされるかもしれませんが、内窓や暖房設備を設置するだけでも効果が期待できます。
最近では室内暖房付き便座も販売されているので、いろいろ検討してみるといいでしょう。
断熱リフォームはお風呂にもおすすめです!
滑りにくくやわらかい床材にする
トイレに限らず水回りは、こぼれた水分によって滑りやすくなっているため、滑りにくい床材に交換するのもおすすめです。
また、いくら転倒防止のリフォームを行なっても、100%転倒を防ぐのは難しいもの。転んだ際のケガが最小限で済むよう、やわらかい床材を選ぶことも大切です。
おすすめの床材はクッションフロア。名前のとおりクッション性があり、滑りにくく防水性・清掃性にも優れています。他の床材と比べ安価な点もメリットです。
補高便座やトイレリフトを取り付ける
トイレでの立ち座りの負担を軽減するものは手すり以外にもあります。
補高便座とは、通常の便座の上に乗せる便座のことで、座面を高くすることで立ち座りをラクにする福祉用具の一つ。一方、トイレリフトは、便座が電動で昇降する福祉機器です。
便座の位置が数センチ変わるだけで、動作の負担は大きく緩和されます。特に膝を曲げるのがつらい方は、これらを導入することでトイレのストレスを減らせるでしょう。また、介護する人の負担も軽減できます。
補高便座は工事不要で取り付け可能です!
和式トイレから洋式トイレに交換する
しゃがむ必要のある和式トイレは足腰への負担が大きく、高齢の方にとってはやさしくないつくりです。
バランスを崩して転倒してしまう危険性もあるため、やはり洋式トイレに変更するのがおすすめです。
鈴与ホームパルでは和式トイレから洋式トイレへのリフォーム実績があり、施工事例も公開しています。
どのように変わるのかイメージしたい方は、ぜひチェックしてみてくださいね。
洋式であれば、車椅子から便器に移動することも可能になります。
介護するためのスペースを確保する
トイレの介護リフォームでは、トイレを利用するご本人と介護する人両方が使いやすいトイレにすることが大切です。身動きが取りづらい狭いトイレは介助がしにくく、介護を受けるご本人もつらい思いをしてしまうでしょう。
そのため、現在トイレ介助が必要な場合はもちろん、将来介助が必要になったときに備えて、トイレ空間の拡大も視野に入れましょう。
その際は、車椅子で入室したときにスムーズに便器へ移動できるかも考慮してください。
寝室に近い場所にトイレを移動する
トイレの物理的な近さも、負担を軽減するポイントです。トイレに行き来する時間を短縮できれば、移動時の転倒やヒートショックなどの予防につながります。
そのため、寝室あるいはリビングなど、利用されるご本人が多く過ごすスペースの近くにトイレを移動または増設するのも一つの方法です。
ただし、マンションの場合はトイレの移動・増設は原則としてできない点は押さえておきましょう。
トイレへの移動距離が短ければ、介護する人の労力も減ります。
介護を目的としたトイレリフォームの費用相場
上述のとおり、介護を目的としたトイレリフォームの施工内容は多岐にわたりますが、どのくらいの費用がかかるのか気になる方は多いでしょう。
ここでは、鈴与ホームパルでお客様からご相談されることが多い介護リフォームの費用相場をまとめました。
項目 | 費用相場 |
手すりの設置 | 1~10万円 |
入り口の段差解消 | 1~20万円 |
ドアを引き戸にする | 4~20万円 |
内窓の設置(断熱リフォーム) | 5~10万円 |
手すりは壁の強度に問題がなく、縦型のものを1つ取り付けるのであれば1万円から可能です。ご本人の動作に合わせて場所や形状、数をご検討ください。
いずれのリフォームも住宅の状態や製品の機能などにより費用は上下します。リフォーム会社に見積もりを依頼してから判断するといいでしょう。
介護を目的としたトイレリフォームのポイント
最後に、トイレの介護リフォームをする際に知っておきたいポイントを見ていきましょう。以下の点を押さえておくと、費用負担が減り、適切な介護リフォームができるようになります。
補助金・助成金を申請する
介護リフォームは、条件を満たせば介護保険制度や自治体による補助金・助成金制度を利用できます。該当する場合は積極的に活用しましょう。それぞれの支給対象や支給額は次のとおりです。
介護保険制度
介護保険の「住宅改修支援制度」は、要支援・要介護認定を受けている方が利用できる制度です。対象のトイレリフォーム費用に対し、上限20万円(自己負担1割~3割)の保険給付を受けられます。
支給対象 | ・要介護1~2 ・要支援1~5 |
支給額 | 生涯20万円まで(所得に応じて1割から3割自己負担。生活保護受給者は自己負担なし) 以下に該当する場合は上限が再度20万円まで設定される ・要介護の区分が三段階上昇時 ・転居 |
対象のトイレリフォーム | ・手すりの設置 ・段差の解消 ・滑り防止および移動の円滑化等のための床 または通路面の材料の変更 ・引き戸等へのドア交換 ・洋式便器等への交換 ・上記リフォームに付帯して必要となる工事 |
保険給付を受けるには、事前に市町村へ申請書を提出し、 工事完成後に工事費内訳書やリフォーム前後の写真、領収書等を提出する必要があります。
細かな手続きについては、リフォーム会社の担当者と協力して進めていきましょう。
自治体による補助金・助成金制度
各自治体が独自に行なっている住宅改修費支援事業等では、要支援・要介護認定を受けられなかった方でも利用できる場合があります。
参考として、2つの自治体の制度をご紹介します。
■事例①|高齢者にやさしい住まいづくり助成事業(福島県南相馬市)
支給対象・条件 | 市長が住宅改修の必要性があると認める60歳以上の高齢者 (介護保険法において要支援または要介護と認定された方を除く)で、所得が児童手当所得制限限度額以下の方 |
支給額 | ・助成対象者が現に居住している1住宅につき、住宅改修に要した費用の90/100に相当する額 ・18万円(上限額) |
対象のトイレリフォーム | ・手すりの設置 ・段差の解消 ・滑り防止および移動の円滑化等のための床または通路面の材料の変更 ・引き戸等へのドア交換 ・洋式便器等への交換 ・上記リフォームに付帯して必要となる工事 |
高齢者が要介護・要支援となるのを予防するために実施している助成事業です。介護保険の住宅改修支援制度と同様のトイレリフォームが対象となっています。
■事例②|住宅改修予防給付(東京都荒川区)
支給対象・条件 | 介護保険の要介護認定の結果が非該当となった方で、 住宅改修が必要と認められる方 |
支給額 | ・給付対象となる工事費用の7割から9割(生活保護受給者は全額給付) ・18万円(上限額) |
対象のトイレリフォーム | ・手すりの設置 ・段差の解消 ・滑り防止および移動の円滑化等のための床または通路面の材料の変更 ・引き戸等へのドア交換 ・洋式便器等への交換 ・上記リフォームに付帯して必要となる工事 |
こちらは、介護保険の要介護認定で非該当となった高齢者に対して、介護保険と同様の助成を行なうものです。
今回ご紹介した自治体の助成制度は、要介護あるいは要支援に認定されなかった方を対象としていますが、助成事業の中には、介護保険と併用可能なものもあります。
介護リフォームを検討されたら、お住まいの自治体の制度を必ず確認しましょう。
介護目的以外のトイレリフォームの助成金・補助金についてまとめた記事もございます。
【2022年版】トイレリフォームに活用できる助成金・補助金まとめ>>
有資格者の在籍と介護リフォームの実績を確認する
介護リフォームではリフォーム会社選びも重要なポイントです。適切な提案・施工を受けるためには、リフォーム会社に介護リフォームの知識・経験が必要になります。
そのため、リフォーム会社を選ぶ際は、福祉住環境コーディネーターが在籍しているか、介護リフォームの施工実績があるかを確認しましょう。
こういった会社であれば適切な提案・施工を受けられるほか、介護保険や助成金の申請もスムーズに進みます。
また、事前に地域包括支援センターに相談し、工事前の現地調査時にケアマネージャーに立会ってもらうのもいいでしょう。
鈴与ホームパルには福祉住環境コーディネーターが複数在籍し、介護リフォームの実績も豊富です。
トイレの介護リフォームまとめ
日常生活で介護が必要になっても、トイレだけは自力で行ないたいという方は多くいらっしゃいます。手すりの取り付け、段差の解消、内窓の設置は比較的安価・短時間で行え、介護保険や自治体の制度を利用できれば、さらに費用を抑えられます。
また、介護リフォームは、“暮らしを豊かにする空間づくり”を意識すると楽しく取り組めます。
利便性の向上はもちろん、見た目がおしゃれになった、きれいになって気持ちがいい、掃除がラクになったなどの点で喜ばれる方はたくさんいらっしゃいます。
今はまだ介護リフォームの必要性を感じていなくても、そのときは突然やってくるものです。
鈴与ホームパルでは事例とともに最適なご提案をさせていただきます。10~15年後を見据えて検討されてみてはいかがでしょうか。