耐震補強は意味がない?重要性を理解して耐震補強を行おう
2024年1月に起きた能登半島地震の被害状況を受け、住まいの耐震への関心が高まっています。しかし、耐震補強を具体的に検討していく中で「耐震補強は意味がない」という情報に触れ、どう行動すべきか迷っている方もいらっしゃいます。少なくない費用がかかる耐震補強ですから、納得して工事に取りかかりたいですよね。
今回は、 耐震補強は意味がないと思われてしまう理由と、耐震補強の重要性を解説します。自分や家族の命を守るために、耐震補強の理解を深めていきましょう。
耐震補強は「意味がない」と思われてしまう理由
耐震補強は意味がないと言われるのには、主に以下のような理由があると考えられます。
・耐震補強の目的を間違えている
・耐震補強後の効果をイメージしにくい
・災害イマジネーションの低さ
・旧耐震ではないから不要だと思っている
・悪徳業者による施工被害を見た・聞いた
それぞれ詳しく見ていきましょう。
耐震補強の目的を間違えている
「耐震補強工事は、絶対に壊れないための工事」と捉えている方もいます。この考えの場合、大きな地震が起きた際に倒壊する家の様子を見れば、耐震補強は意味がない、と思うのは当然のことかもしれません。
ここで、耐震補強の目的をあらためて整理しましょう。耐震補強の目的は、「家が崩れて潰されてしまうリスクを減らす」ことにあります。つまり、「逃げる時間を稼ぐ」ために行うものです。
耐震補強をして倒壊を免れる例ももちろんありますが、倒壊する家もあります。ただ、倒壊するスピードはゆっくりとなり、家屋の下敷きになる前に逃げ出すことができます。
家を守るのではなく、命を守るために行うものだと理解すれば、意味のない無駄なこと、とはならないはずです。
耐震補強後の効果をイメージしにくい
耐震補強では、壁や基礎といった構造体や、下から見えにくい屋根などが工事対象となります。キッチンやお風呂などのリフォームと異なり、工事後の変化を可視化しにくいため、工事の効果を感じにくいという側面があるのは確かです。
効果を実感しにくい一方で、耐震補強にかかる費用は高額になることが多いもの。費用対効果が分かるのは地震が起きたときですから、「耐震補強は意味がない」とまではいかなくても、「補強工事の重要性を実感しにくい」という方は少なくないかもしれません。
耐震補強の重要性については、のちほど詳しく解説します。
補強工事の内容を聞いても、本当にその工事が正しいのかの判断が難しいというケースもあるでしょう。
災害イマジネーションの低さ
「地震が起きなければ耐震補強は意味がない」と考える方もいるかもしれません。しかし、これは地震が起きた際、自分のまわりで起こる状況を具体的にイメージできていないからこその発想、ともいえます。
この災害イマジネーションの低さは、内閣府のサイト「防災情報ページ」でも課題として挙げられています。同サイトによると、阪神・淡路大震災における死因のほとんどは、家屋の倒壊・家具の転倒による圧迫死だったとされています。
この状況をイメージすると、地震が起きた際に命を守るには、建物の耐震性が大きく関係していることは明らかです。
災害に備え、災害用リュックや備蓄品を用意される方は多いですが、それも生きてこその対策です。
旧耐震ではないから不要だと思っている
「旧耐震基準ではなく、新耐震基準で建てられた家だから耐震補強は必要ない」と考える方も少なくありません。
耐震補強が必要といわれる住宅は、旧耐震基準で建てられた家、つまり1981年5月以前に建築確認申請がなされた家であることは確かです。家際、大きな地震が起きたときの被害傾向としても、旧耐震の家における被害は大きなものでした。
ただ、新耐震基準や2000年基準で建てられた家がまったく被害がないというわけではありません。2016年に起きた熊本地震、そして2024年の能登半島地震でも、新耐震基準の家が倒壊する例は報告されています。
したがって、旧耐震基準ではないから耐震補強は不要とはなりません。新築してから何度か地震が起きていれば、構造に欠陥が生じていることもあります。耐震性は建築時の耐震基準ではなく、現在の建物の状態で判断することが大事です。
新耐震基準、2000年基準で建築された家も、耐震診断を行う価値は十分にあります。
悪徳業者による施工被害を見た・聞いた
耐震補強の費用は安くないため、できるだけ安価に工事をしてくれる業者を探して依頼する方もいらっしゃいます。しかし、業者の中には残念なことに、無意味な工事を行う悪徳業者も。その施工被害を見たり聞いたりして「耐震補強工事=意味がない工事」となってしまうことがあります。
悪徳業者に引っかからないために、業者選びの際は次の点をチェックしましょう。
・耐震診断を行ってくれるか、耐震診断書を作成してくれるか
・国・都道府県・市の公的機関、あるいは日本木造住宅耐震補強事業者協同組合(通称:木耐協)などが指定する専門会社かどうか
当社は木耐協に所属しており、耐震診断士や耐震技術認定者等の資格を持つ社員が在籍しています。
悪徳業者を見極めるためには費用相場を抑えておくことも大事です。耐震補強工事の相場については、こちらの記事を参考にしてください。
耐震補強工事の費用は150万円前後が目安!相場について詳しく解説>>
耐震補強が重要な理由
一般財団法人国土技術研究センターによれば、2011年~2020年に全世界で発生したマグニチュード6.0以上の地震のうち、日本周辺で起きた割合は17.9%にもおよび、全世界で最多です。日本の陸域には約2,000の活断層があると推定されているため、いつどこで地震が起きてもおかしくありません。
そして、総務省消防庁の資料によると、最大震度7を観測した東日本大震災で被害を受けた建物の多くは、旧耐震基準で建てられた建物であると報告されています。一方で、大きな被害を免れた建物の多くは耐震補強・改修がなされた建物であることも分かっています。
世界的に見ても地震の多い日本だからこそ、耐震補強が重要になってくるのです。
耐震補強を行うにあたってよくある疑問
耐震補強工事をする際、お客様からよくいただく質問をまとめました。ご自身のケースにあてはめて見ていきましょう。
耐震補強が必要な建物とは?
耐震補強をすべき否かは、専門家による耐震診断をもって判断されるものですが、目安となる特徴はあります。次の2つに該当する建物は、耐震補強が必要なケースが多いです。
・旧耐震基準で建てられた建物(1981年5月以前に建てられた建物)
・木造で窓が多い、窓のサイズが大きい建物
1981年6月に耐震基準が大幅に強化され、現行の「新耐震基準」が施行されました。それ以前の耐震基準は「旧耐震基準」と呼ばれ、耐震性が不足している可能性が高いです。
また、木造建築物は、筋交いや金物で構成された「耐力壁」で横からかかる力に対抗する構造です。そのため、窓が多い・窓が大きい建物は、窓が少なくて小さい建物に比べ、耐震性が低くなりやすい傾向にあります。
しかし、窓の多いすべての木造が地震に弱いわけではありません。注意したいのは、耐力壁の量やバランスが強化される前の旧耐震基準で建てられた建物。縁側などの大きな開口部がある昔ながらの日本家屋は、耐震補強が必要なことが多いです。
耐震補強が必要な家の特徴などをまとめた記事もございます。こちらもチェックしてみてください。
耐震補強が必要な家ってどんな家?工事内容、費用、補助金も解説!>>
耐震補強工事中は仮住まいを用意する必要がある?
耐震補強工事では、必ずしも仮住まいを用意する必要はありません。補強箇所が部分的であれば居住スペースを保てるため、住みながら行えます。
一方、基礎を全面的に改修するなど大規模な工事の場合は、居住スペースを確保しづらく、ケガの恐れもあるため、仮住まいの準備が必要に。職人の出入りや工事音がストレスになることもあります。家族間で話し合って決めていきましょう。
耐震補強工事中の過ごし方や注意点は、こちらの記事で詳しくご紹介しています。
木造住宅の耐震補強工事は住みながらできる?注意点も確認しておこう>>
まとめ
住まいの耐震補強の重要性について解説しました。先の能登半島地震では、住宅が揺れ始めてからおよそ10秒で倒壊してしまった家と、倒壊しなかった家の映像も残っています。
また、政府の地震調査委員会が2024年1月に発表した内容によると、南海トラフ巨大地震(マグニチュード8〜9クラス)が発生する確率は、20年以内で60%程度、30年以内で70〜80%程度とされています。これらを鑑みると、やはり建物の耐震性は命を守るために必要な措置といえます。
鈴与ホームパルでは、お客様とコミュニケーションを取りながら、きちんと耐震診断を行ったうえで適切な耐震補強工事に取り組みます。まずは耐震診断を行い、ご自宅の耐震性を知ることから始めてみませんか。
耐震診断・耐震補強工事では補助金制度を利用できる可能性が高いです。補助金については、こちらの記事で詳しくまとめています。