木造住宅の耐震補強工事に使われる筋交いとは?役割や重要性をご紹介
耐震補強リフォームについて調べていると、「筋交い」という言葉を見かけることがあります。
筋交いとは、柱と柱の間に斜めに入れる部材のことです。地震に強い家にするために欠かせないものですが、その重要性は広く知られていません。
そこで今回は、 木造住宅の耐震補強における筋交いの種類と役割、筋交いなどを使った補強工事について詳しくご紹介します。耐震補強の疑問を解消して、気持ちよく耐震リフォームを進めていきましょう。
筋交いの役割がわかると、家の構造もよくわかってきます!
木造の耐震補強リフォームにおける筋交いとは
耐震補強でメインとなる工事は壁の補強ですが、その際に不可欠な部材が「筋交い」です。まずは、筋交いの種類と役割、建築基準法との関わりについて見ていきましょう。
筋交いの種類と役割
種類
種類 | 片筋交い、たすき掛け |
部材の幅 | 9cm以上 |
部材の厚さ | 1.5cm、3cm、4.5cm、9cm |
筋交いは大きく分けて2種類あり、部材を斜めに1本だけかける「片筋交い」と、「×」のようにして2本かける「たすき掛け」があります。部材の幅は9cm以上と決められており、厚さは1.5cm、3cm、4.5cm、9cmの4種類です。
筋交いを入れた壁を「耐力壁」といい、耐力壁の強度は「壁倍率」という数値であらわします。たすき掛けの壁倍率は片筋交いの2倍となり、部材は厚くなるほど壁倍率が高くなる仕組みです。
ただし片筋交いでも、隣に反対向きの片筋交いを入れることで強度を保てることがあります。
片筋交いかたすき掛けか、厚さをどうするのかは、住宅の耐震数値によって判断します。
役割
日本の住宅は、柱と梁で建物を支える軸組工法(在来工法)が主流です。軸組工法は縦方向からかかる力には強いですが、地震時の横揺れや台風のときの横風など、横方向からかかる力には強くありません。
そこで活躍するのが、筋交いです。柱と柱の間に斜めに部材を入れることで、横からかかる力に抵抗します。 筋交いを入れることで、柱と柱の間にできる四角形をきれいに保つことができる、つまり倒壊を防ぐことができるのです。
伝統構法でできた古民家以外は、基本的に筋交いは入っていますが、強度が弱い、量が少ない、配置のバランスが悪いなどで、一定の耐震性を確保できていないことが多いです。
筋交いの強度は、取り付ける際に用いる「筋交いプレート」などの金物で高めることができます。
建築基準法で定められている
建築基準法では、新築時には筋交いなどが入った耐力壁を使うことを定めています。
具体的には、建築基準法施行令第45条で、筋交いの素材、幅、厚さ、取り付け方法などを細かく指定しており、建築基準法施行令第46条にて、耐力壁をバランスよく設置することを定めています。
また、筋交い金物も重要です。建築基準法施行令第45条にて下記の内容が記載されています。
「筋かいは、その端部を、柱とはりその他の横架材との仕口に接近して、ボルト、かすがい、くぎその他の金物で緊結しなければならない」
建築基準法施行令 第四十五条
古い木造の家屋では筋交いの接合部に「くぎ」や「かすがい」が使われておりますが、固定力が弱いため、地震時に引き抜けてしまった事例が多く報告されています。
木造住宅の壁を補強する工事・方法
木造住宅の壁の補強方法には、筋交い+筋交い金物で耐力壁にする方法のほかに、構造用合板を用いて耐力壁にする方法があります。それぞれの工事方法を見ていきましょう。
筋交いと筋交い金物を使った耐力壁
筋交いは土台や梁と接合させて固定するため、設置の際には壁のほか、床と天井の一部の解体も必要になります。 解体して躯体が見えたら、筋交いを筋交い金物で固定し、耐力壁に仕上げていきます。
なお、筋交い金物は形状によって3タイプあり、それぞれ接合する面の数に違いがあります。
・プレート型(1面)
・二面施工型(2面)
・ボックス型(3面)
既存の筋交いに筋交い金物だけ設置するケースや、既存の片筋交いに部材を加えてたすき掛けにするケースもあります。
面材耐力壁
筋交いを使った耐力壁のほかに、構造用合板(耐力面材)を用いる「面材耐力壁」というものもあります。
施工方法は、壁や床、天井を解体したのち、梁や土台に受け材などを取り付けることからスタート。そこに構造用合板をビスで固定していきます。合板の素材、ビスの本数なども細かく指定されています。
また、 面材耐力壁には天井と床を解体せずに設置できる製品もあり、こちらを使うと工期と予算を抑えることが可能です。ただし、柱や梁が剥き出しになっている古民家のような「真壁(しんかべ)」の住宅では施工できないため注意しましょう。
筋交いのうえから構造用合板を施工するケースもあります。予算は上がりますが、その分壁倍率は高くなります。
壁の耐震補強工事については、こちらの記事でも詳しくご紹介しています。
耐力壁の筋交いに関する注意点
ここでは、筋交いを入れて耐力壁にする際の注意点をご紹介します。以下の点を押さえておくと、リフォーム会社との打ち合わせもスムーズに行えるでしょう。
筋交いの量と耐震等級は正比例しない
建物の耐震性は耐震等級であらわすことができます。 筋交いを入れると耐震性は向上しますが、増やした分だけ耐震等級が上がるというわけではありません。建物の耐震性は建物全体のバランスで決まります。
なお、耐震等級は以下の3区分となります。
耐震等級1 | 建築基準法で定められている最低限の耐震性能を満たす水準 数百年に一度の震度6強~7程度の地震で倒壊や崩壊しない、 数十年に一度の震度5程度の地震で損傷を生じない |
耐震等級2 | 耐震等級1の1.25倍の耐震強度水準 長期優良住宅や学校・病院などでは耐震等級2以上が条件 |
耐震等級3 | 耐震等級1の1.5倍の耐震強度水準 住宅性能表示制度で定められた耐震性能の中で最も高いレベル |
耐震補強工事では、耐震等級1以上にすること、つまり新耐震基準適合住宅にすることを目指します!
将来的に断熱材を入れる場合はその旨を伝える
築年数の古い木造住宅の場合、断熱リフォームを検討されている方も少なくありません。しかし、構造用合板を使って面材耐力壁にする場合、後から断熱材を入れることはできないため注意しましょう。
そのため、将来的に断熱リフォームをお考えの方は、リフォーム会社にその旨を伝えておくことが大事です。
ちなみに、 耐震補強のタイミングで断熱材を入れるケースはあまりありません。そもそも断熱材は、家全体を覆うようにして入れることで効果を発揮するもの。一部の壁にアプローチする耐震補強工事では、思うような断熱効果は得られません。
断熱リフォームの際に、耐震補強も併せて行うケースはあります。
規模によっては仮住まいが必要になる
耐震リフォームは、住みながら行うことが可能です。筋交いを入れる補強工事では、壁や床、天井の一部を解体することがありますが、基本的には住みながら工事を進められます。
ただし、 工事箇所が多く、リフォームの規模が大きくなる場合は、仮住まいに引っ越したほうが経済面・肉体面の両方で負担が減る場合も。工事中の暮らしをイメージして判断していきましょう。
とくに、高齢の方や小さなお子さんがいるご家庭には仮住まいをおすすめしています。
住みながら行える工事、仮住まいが必要となる工事については、以下の記事で詳しくご紹介しています。
<内部リンク|耐震補強 木造 住みながら>
木造住宅での筋交いを使った耐震補強工事まとめ
地震時の横揺れに抵抗できる筋交いは、住まいの耐震性にとても大きな効果をもたらす部材です。壁や床、天井の解体が必要になることが多いですが、その分安心を手に入れることができます。
ただ、耐震補強の方法は、筋交いや構造用合板を使って耐力壁を作るだけではありません。基礎の補修・補強や、屋根を軽量化することでも耐震性は向上します。
鈴与ホームパルでは、予算や工期、工事中の過ごし方などまでを考慮した耐震補強案をご提案させていただきます。きめ細かにサポートいたしますので、安心してお任せいただけたらと思います。
この記事のポイント | ・筋交いは壁の耐震補強に必要不可欠で、建築基準法で使用を定められている ・筋交いと筋交い金物を使った耐力壁を作るケースがある ・筋交いの数と耐震等級は比例しない |