木造住宅の耐震補強方法は?補強の流れも確認しておこう
築年数の経った戸建てに住まわれている方の中で、耐震性が気になる方はいませんか。実際に、地震が起きた際に家が揺れ、不安に感じている方もいらっしゃるかもしれません。
耐震補強を行うときは、耐震補強の方法や手順などを事前にイメージできると、安心して工事に臨めるようになるものです。今回は、 木造住宅の耐震補強リフォームのやり方と手順、注意点などを解説します。
耐震リフォームのポイントを押さえて、長く安心して暮らせる住まいにしていきましょう。
耐震リフォームの方法にはどんなものがあるの?
耐震リフォームは、どこを補強するかによって3つの方法に分かれます。まずは、家の足元となる「基礎」の補強、そして建物の中で広い面積を占める「壁・構造」の補強、最後は家の頭部分にあたる「屋根」の軽量化です。
耐震補強の方法 | 具体的な施工内容 |
基礎の補修・補強 | ・ひび割れの補修 ・傷んだ木材の差し替え |
壁や構造の補強 | ・壁の強度を上げ、壁の数を増やす ・壁をバランスよく配置する ・金物を使って接合部を堅固にする |
屋根の軽量化 | ・瓦屋根を軽量瓦や板金にして軽くする |
1.基礎の補修・補強
どんなに壁や屋根の耐震性を上げても、足元が弱ければ本来の耐震性を発揮できません。
コンクリート基礎にひび割れがある場合は、凝固性のあるエポキシ樹脂という液体を注入してひびを補修します。状態によって、鉄板や樹脂製の板を張って強度を上げることも。
また木造住宅の場合、土台の木材が湿気やシロアリ被害などで傷んでいるケースも見られます。その場合は木材を差し替える工事を実施。必要に応じて、湿気やシロアリ予防対策も行います。
2.壁や構造の補強
耐震補強工事でメインとなるのが壁の補強。 「壁を強くする」「壁の数を増やす」「壁をバランスよく配置する」のがポイントです。また、構造の強さは、部材のつなぎ目に用いる金物の数や種類によっても変わります。
壁
壁の耐震補強でよく用いられるのが筋交いです。筋交いとは、柱と柱の間に斜めに設置する部材のことをいいます。
筋交いは、土台や梁と接合させて固定するため、土台と1階2階の梁を出すために、壁だけでなく床と天井の解体も必要になります。
工事の手順を簡単に説明すると、養生をして既存の壁・床・天井を解体し、柱と柱に筋交いを入れて耐力壁に仕上げます。 耐力壁は耐震診断の結果に応じ、必要な箇所に必要な数だけ作ります。
筋交いの工事が終わったら、新しい壁材を施工します。床と天井を元に戻し、クロスなどの仕上げ材を貼ったら完了です。
筋交いは、地震時の横揺れに対抗できる構造にすることが目的です。
構造・接合部
建物は壁、柱、梁が一体となることで強い構造となり、耐震性を保持するものです。地震で揺れた際、たとえば柱が引き抜けてしまうと倒壊につながるため、可能な限り接合部を補強金物でつなぎ合わせていきます。
木造住宅では、山形金物、アンカーボルト、ホールダウン金物といった金物を使うことが多いです。こうした耐震性を上げる金物を、適材適所に使用していきます。
3.屋根の軽量化
建物の頭部分が重いと、地震時の揺れの影響を大きく受けてしまいます。そのため、屋根を軽くすることでも耐震性を向上させることが可能です。
屋根を軽くするには、今の屋根材より軽量の屋根材に交換するのが近道です。築年数の古い戸建ての場合は「和瓦」が採用されていることが多く、以下のような屋根材に交換して耐震性を上げるやり方があります。
・軽量瓦
・化粧スレート屋根
・金属屋根
和瓦の趣を残したい場合は、軽量瓦が選択肢に挙がるでしょう。 化粧スレート屋根とはセメントを主原料とした屋根材で、現在最も多く普及している屋根材です。金属屋根の材質にはトタンやガルバニウム剛板などがあり、屋根材の中で最も軽量な部類となります。
和瓦はメンテナンスフリーといわれるほど耐久性が高い一方で、重さがネックになることがあります。
耐震補強の手順
実際に耐震補強を依頼したとき、どのような流れで行うのかがイメージできると安心ですよね。ここからは、現地調査から補強工事までの流れを見ていきます。
1.現地調査
まずは現地調査からスタートです。外壁にひびが入っていないか、家が傾いていないかなど、表面化している問題がないかをチェックします。
耐震診断は建築図面をもとにして行いますが、修繕や改修などで図面と異なるケースもあるため、図面と現場の照らし合わせも行います。 主に確認するのは、耐震性に影響する筋交いの太さや位置、金物の種類など。目視や器具を使って正確な情報を整理します。
2.耐震診断
有資格者による耐震診断を実施。現地調査で得た情報と図面をもとに、耐震性能を数値化します。
具体的には、阪神淡路大震災の地震レベルに耐えられる耐震性能の評点を「1.0」とし、プラスマイナスで査定します。このうち、1.0に満たない場合は耐震補強の必要があるといえます。
【評点とその意味】
・1.5以上…倒壊しない
・1.0以上〜1.5未満…一応倒壊しない
・0.7以上〜1.0未満…倒壊の可能性がある
・0.7未満…倒壊の可能性が高い
当社では、「一般耐震技術認定者」が耐震診断を行います。
3.耐震補強案・設計案の作成
耐震診断結果をもとに、耐震補強案・設計案を作成。この段階で耐震補強にかかる費用もわかってきます。
筋交いによる補強が必要な場合は、さきほどご紹介したように壁・床・天井を解体することになるため、大掛かりな工事になる傾向があります。
ただ、もともとある程度の耐震性が備わっている場合は、床と天井を壊さずに壁補強ができるケースもあり、この場合は費用を抑えることが可能です。
どのように補強するのか、施主様自身も理解することが大事です。
4.耐震補強工事
補強案・設計案に従って、耐震補強工事を行います。壁や基礎の補強は工事が終わると隠れてしまう部分ですから、プラン通りに施工されているかを工事中にチェックできると安心です。
お客様から「耐震補強工事中は家に住めますか?」というご質問を受けることがあります。 部分的な改修であれば一般的なリフォームと同様、住みながらの工事は可能です。
一方、大規模な改修になったときは、仮住まいへのお引っ越しを勧めることも。空き家にして一斉に工事を始めたほうが費用を抑えられるケースがあるためです。ただ、高齢の方がいらっしゃるなどしてお引っ越しが難しいときは、お部屋ごと順番に工事を行うこともできます。
仮住まいに引っ越すか、住みながら進めるかは、リフォーム会社とよく相談して決めていきましょう。
耐震補強工事をするときの注意点
1981年(昭和56年)5月以前に建築された家は、旧耐震基準で建てられている可能性が高いため、何らかの耐震補強が必要な場合が多いです。
そのため、たとえば静岡県では、1981年5月以前に建築された木造住宅には無料で耐震診断を行なったり、耐震補強工事に補助金を交付したりしています。補助額や条件などは市町村ごとに異なるため、お住まいの自治体のサイトを確認してみましょう。
なお、 耐震基準が旧・新のどちらで建築されているかの判断は、建物の完成日ではなく建築確認申請が下りた日付で判断します。そのため、完成日が1981年6月以降でも旧耐震で建てられている場合がある点も押さえておきましょう。
補助金制度は自治体によって、高齢者のみの世帯は補助額が増額されたり、1階のみの改修でも補助金対象になったりとさまざまです。
耐震補強の補助金については、こちらの記事でも解説しています。
耐震補強リフォームは補助金を活用できる?事例や補助金を受けるための条件もチェック>>
耐震補強の方法まとめ
耐震補強工事の効果は、万が一のことが起こったときにはじめて実感できることですから、なかなか実行に移しづらいという側面があります。しかし、耐震補強工事を行ったお客様から、「この前の地震で我が家は揺れなかった」という安堵の声を聞くと、やはり地震への備えは重要だと改めて感じます。
耐震性に不安を感じているようでしたら、耐震診断だけでも行ってみることをおすすめします。特に1981年(昭和56年)以前に建築された住宅にお住まいの場合は、現状の耐震性能を知ることが大事です。そのうえで、予算を考慮しながら適切な耐震補強の方法を選んでいきましょう。
この記事のポイント | ・耐震補強の方法は主に「基礎」「壁・構造」「屋根」の3つ ・現地調査や耐震診断の結果を踏まえて、計画を立てる ・旧耐震の家は何らかの補強が必要な可能性が高い |