耐震補強リフォームは補助金を活用できる?事例や補助金を受けるための条件もチェック
「耐震補強リフォームは高そう…でも地震にはしっかり備えたい」というときに知ってほしいのが耐震補強にまつわる補助金制度。国は2030年までに耐震性が不十分な住宅をおおむね解消することを目標に掲げ、住宅の耐震性能の向上を支援しています。
ただし、補助金を受け取るためには条件があり、自治体ごとにさまざまなパターンがあります。そこで今回は、実際の補助金制度の事例や、補助金を受けるための条件やポイントなどを分かりやすくまとめました。
当社では、耐震リフォームをされる方の7割程度が補助金を活用しています!
耐震補強リフォームは補助金が活用できるって本当?
住宅の耐震化は国を挙げての取り組みであることから、多くの地方自治体で耐震診断・耐震補強に関する補助金制度をもうけています。そのため、耐震診断によって補強が必要と判断されれば、補助金を活用できる可能性は高いです。
適用条件は各自治体によって異なるものの、対象とする住宅は「旧耐震基準で建てられた木造住宅」とすることが大半です。補助金額を含め、お住まいの自治体のサイトをチェックしてみましょう。
また、補強工事にどのくらいの費用がかかるのかも気になるところですよね。補助金を活用した場合の耐震補強工事費は以下の表によると、100万〜150万円未満が15%、150万〜200万円未満が18%、200万〜250万円未満が15%となり、150万〜200万円未満がボリュームゾーンとなっています。
耐震補強工事の費用相場については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
耐震補強工事の費用は150万円前後が目安!相場について詳しく解説>>
金額は「工事費用の何割まで」と設定されていることが多いです。
耐震補強工事における補助金・助成金の一例
それでは、実際にどのような耐震診断・耐震補強工事の補助金制度があるのか、具体的な事例をご紹介します。各自治体によって制度の内容は異なりますが、一定の傾向はつかめるでしょう。
地方自治体の制度
地方自治体が実施している補助金制度を5つご紹介します。それぞれ、主な助成要件と補助金の割合、限度額をまとめました。
なお、助成要件にある「評点」とは、耐震診断の結果判明した耐震性能を示す数値のこと。各数値の内容は以下のとおりです。
【評点とその意味】
・1.5以上…倒壊しない
・1.0以上〜1.5未満…一応倒壊しない
・0.7以上〜1.0未満…倒壊の可能性がある
・0.7未満…倒壊の可能性が高い
静岡県静岡市
助成要件 | ・昭和 56 年5月以前に建築された木造住宅 ・補強後の評点 1.0 以上 ・補強前後の評点が+0.3 以上 |
補助金の割合 | 補強計画+補強工事にかかる費用の8割 |
限度額 | 上限100万円 |
上記の要件に加えて、補強前の評点が0.7未満の建物を補強によって1.2以上にし、地震後も自宅で生活できるレベルの耐震性能にした場合、補助額を15万円増額する拡充措置があります。
なお、静岡県では県内の全自治体を対象に、昭和56年5月以前に建築された木造住宅に対し、専門家による無料の耐震診断を行なっています。
東海地震が懸念される静岡県だけに手厚い支援になっていますね。
東京都目黒区
助成要件 | ・昭和 56 年5月以前に建築された2階建て以下の木造住宅 ・区が実施する耐震診断、または耐震診断事務所による 耐震診断を受けた建築物であること(※) ・建築物全体が必要な耐震基準値を満たす 改修工事をするための、設計を行うこと |
補助金の割合 | 耐震改修設計費用の50%以内 |
限度額 | 上限20万円 |
こちらは耐震改修の設計に対する補助金です。対象となる建物の種類は、専用住宅・併用住宅・共同住宅・保育所・老人ホームなどで多岐にわたります。
また昭和56年5月以前に建築された木造住宅であれば、耐震診断のみの場合も補助金が交付されます。
愛知県名古屋市
助成要件 | ・昭和 56 年5月以前に建築された2階建て以下の木造住宅 (戸建て、長屋、共同住宅含む) ・名古屋市の無料耐震診断の結果、評点が1.0未満の住宅。 段階的改修の場合は0.7未満 ・住宅以外の用途に使用している面積が延べ面積の1/2未満の住宅 |
補助金の割合 | 耐震改修工事費の4/5以内 |
限度額 | 一般世帯は上限100万円非課税世帯は上限150万円 |
段階的改修とは複数回に分けて耐震補強工事を行うことで、工事の費用負担を軽減し、耐震補強に取り組みやすくするための措置です。名古屋市では二段階に分けており、最終的に住宅全体の評点を1.0以上にすることを目的としています。
非課税世帯とそれ以外の世帯とで上限額が変わる点も特徴的です。
大阪府大阪市
助成要件 | ・平成12年5月以前に建築された住宅であること ・店舗等の用途を含む併用住宅は、 半分を超える床面積が住宅であること ・申請者の年間所得が1,200万円であること(※) |
補助金の割合 | 耐震改修工事費の1/2 |
限度額 | 上限100万円 |
大阪市では、令和7年における民間住宅の耐震化率95%を目標に、上記の耐震改修工事のほか、耐震診断、耐震改修設計、耐震除却工事に対する補助金も実施しています。
耐震除却工事とは、各階の上部構造評点が0.7未満の住宅を除却する工事のことです。
平成12年5月以前に建築された住宅を対象としている点がうれしいですね。
兵庫県芦屋市
助成要件 | ・昭和 56 年5月以前に建築された木造住宅 ・違反建築物でないもの ・耐震診断の結果、「危険」「やや危険」と診断されたもの ・兵庫県住宅再建共済制度に加入している住宅または加入する住宅 |
補助金の割合 | 住宅耐震改修工事費の4/5(※) |
限度額 | 上限110 万円(※) |
阪神淡路大震災で甚大な被害を受けた芦屋市の補助金制度です。芦屋市では、戸建住宅と長屋を含む共同住宅に対して無料の簡易耐震診断を実施。そのうえで、上記の耐震改修工事費の補助を行っています。
部分的な改修工事の補助、建て替え工事の補助などもあります。
国の税制優遇制度
耐震補強工事を行うと、耐震改修促進税制として国の税制優遇を受けられます。特に知っておいていただきたいのが、所得税の控除と固定資産税の減税です。以下で詳しく見ていきましょう。
税制優遇は補助金の活用の有無にかかわらず受けられます!
所得税の控除
適用となる住宅の要件 | ・自ら居住する住宅であること ・昭和56年5月31日以前の耐震基準により建築された住宅であること ・現行の耐震基準に適合させるための耐震改修を行うこと ・令和5年12月31日までに工事をして居住していること |
控除率 | 耐震改修にかかわる標準的な工事費用相当額の10%を所得税から控除 |
対象工事限度額 | 250万円(控除上限額は25万円) |
既存住宅を耐震改修したときは、工事費用の10%を所得税から控除する「住宅耐震改修特別控除」の適用を受けられます。
工事費用は実際にかかった金額ではなく、国が定める標準的な工事費用に当てはめて計算されます。そのうえで、控除の対象となる工事費の限度額を250万円と定め、その10%分を所得税から控除し、還付する仕組み。したがって、控除の上限額は25万円となります。
控除を受けるためには確定申告が必要です。
固定資産税の減額
対象となる住宅の種類 | ・昭和57年1月1日以前から所在する住宅であること ・平成25年から令和6年3月31日までに、 現行の耐震基準に適合する耐震改修を行っていること ・1戸当たりの工事費が50万円超であること |
減額の内容 | 120㎡までの固定資産税を1/2に減額 |
減額期間 | 改修後の1年間 |
既存住宅を耐震改修した場合、翌年の固定資産税が1/2になる減額措置を受けられます。耐震改修費用が50万円を超えていること、120㎡を超える部分は減額されないことなどに注意しましょう。
適用を受けるには、工事完了後3ヶ月以内に市区町村に申告する必要があります。
耐震補強で補助金を受けるために必要な条件やポイント
ここからは、耐震補強で補助金を受け取るための条件と、手順や工事におけるポイントについて見ていきます。耐震補助金の要点を押さえて、スムーズにリフォームを進めていきましょう。
耐震補助金対象家屋となる条件
補助金制度の適用条件は自治体によってさまざまですが、いくつか共通して見られる条件も。主に以下の3つが挙げられます。
・昭和56年5月31日までに建築確認を受けた木造住宅であること
・評点1.0未満の住宅を、評点1.0以上にする耐震工事を実施すること
・税金の滞納がないこと
耐震補助金は、旧耐震基準で建てられた住宅を新耐震基準適合住宅にするための補助金ということができます。
耐震診断の結果、評点1.0未満だった家は「倒壊の可能性がある・可能性が高い」と判断し、それを改修によって「一応倒壊しない」と判断できる評点1.0以上にすることが、基本の要件になっています。
どんな家が耐震補強が必要になるか、こちらの記事でも紹介しています。
耐震補強が必要な木造住宅ってどんな家?工事に関するよくある疑問もご紹介>>
公的な補助金の場合は、市税などの税金をきちんと納めているかもポイントです。
補強計画の事前審査が必要
補助金を活用するには、まず耐震診断をし、耐震補強計画を立て、その補強計画の審査を通過することが大前提。補強計画書は施工会社が作成するものとなります。
そして、申請を通過し補助金交付の決定を受けて工事をしたあとも、耐震審査が行われます。この審査を通過してはじめて補助金が交付される仕組みです。
そのため、しっかりと補助金を受け取れるような補強計画書、補強工事が重要に。より信頼できる会社に依頼することもポイントになってきます。
段階的改修でも補助金がでる場合がある
耐震診断の結果、評点が低い建物の場合は大掛かりな改修工事が必要になり、費用負担も大きくなるもの。その負担を軽減するために、時期を分けて段階的に改修しても補助金を受け取れる自治体があります。
進め方には差がありますが、第一段階で1階部分の評点を1.0以上にする、第二段階で建物全体の評点を1.0以上にするなどの方法があります。
いずれにしても、段階的改修を取り入れている自治体ばかりではないため、工事を依頼する会社などに確認・相談してみるといいでしょう。
段階的改修は、住んだまま工事を行いたいという方にもメリットがあります。
耐震補強の補助金まとめ
旧耐震基準で建築された木造住宅にお住まいの方であれば、多くの場合で補助金制度を利用できるでしょう。ただ、制度は年々変化しており、世帯構成に制限が加わったり、段階的改修ができなくなったりすることもあるため、都度チェックすることも大切です。
また耐震補強工事は、その他のリフォームの際に並行して行なっておくのもおすすめです。たとえば、お風呂のリフォーム時に浴室の壁に筋交いを入れておけば、耐震診断で筋交いの設置が必要になったときにお風呂の壁を壊さずに済むため、費用も工期も抑えられます。
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この記事のポイント | ・旧耐震の家の場合、補助金を活用できるケースが多い ・各自治体によって補助金の要件や上限額が異なる ・国の補助金や助成金はないが、税制優遇制度がある |